そーせいの時価総額がどの規模まで考えられるのか、リスクはどうなのか。そういったことを書きます。


長文なので2回に分けました。今回は第一回としてアウトライン的なところを書きました。先月くらいに他の投資ブログにてディスカッションさせていただいた時の僕の文章を多少リライトしている部分もありますのでご了承を

  • そーせいの強み
 
 開発の終了したブロックバスター候補があり、ロイヤリティ収入が安定して入る

そーせいは、創薬ベンチャーとしては稀な事に既に販売している薬を持っています。

 ノバルティス社に導出した「グリコピロニウム臭化物」これは商品としてCOPD薬「シーブリ」「ウルティブロ」、として既に販売されています。欧州日本では既に承認済み。販売中ですが、去年末に米国でも承認を受けましたのでほぼ全世界が市場となります。また、同成分の喘息薬としてQVM149の第三相臨床治験が開始されノバルティスがフェーズ3治験中です
 
 COPDは進行性の長期疾患であり長期にわたって服用。医薬品としては安定した収入が確保されているの分野です。市場規模はずっと拡大しておりそーせいの導出薬が売上のピークをむかえるであろう5年後以降にはCOPDの市場規模は130億ドルになるだろうと言われています。また喘息市場は現時点で150億ドルの市場。将来は180億ドルをこえる巨大な市場です。現在この分野で最も売れている薬はGSKの「アドエア」で年商額は日本円換算8000~9000億円。アドエアのようなモンスター薬にならなくとも、シェアの10%、ロイヤリティ5%でもピーク150~200億という収入が見込めます。現状、導出先のノバルティスは世界最大手の製薬企業です。ノバルティスの巨大な販売網を考えると過小に見積もってもシェア10%は達成できる確率が高い。そーせい(と今の株主)は今後のコストは不要で利益だけを享受できる収穫期にあります。

 そーせいは2015年初頭にヘプタレス社(英)を総額480億円で買収。200億キャッシュ。残りの280億はヘプタレスのパイプラインの進捗等に合わせて支払われるという契約を結びました。

 そーせいはIFRS(ヨーロッパ型の国際会計基準)を採用しています。IFRS会計規準においては買収先の会社の純資産と買収額との差、いわゆる「のれん」の償却をしませんので、ヘプタレス社の価値が大きく毀損しないかぎり会計上の損は発生しません。ざっくりいえば買収した会社の価値差を資産計上するためです。

 IFRS規準の会計においてはこの資産計上された「のれんのようなもの」を毎期洗替します。いわゆる時価会計ですが、こういったバイオのような専門分野におけるパイプラインの現在価値を評価する方法はありません。つまり買収先ヘプタレス社が倒産に近い状態にならなければ巨額減損は発生しません。理論上はそーせい社単体で赤字になることは不可能といっていいでしょう

この部分(売上150億が保証されている)だけで時価総額換算1500~2000億位の価値はあります。

「そーせい株はCOPD部分(時価総額1000億くらいの価値)+喘息薬(同じく時価1000億くらいの価値)+ヘプタレスのパイプラインの価値」である


  • ヘプタレス社の強み

GPCRの精度の高い&独自の立体構造解析技術(Star技術)により次から次へと薬候補を作り出すことができる

・GPCR(Gタンパク質共役型レセプター)を標的とする薬剤は創薬の中でも主流の創薬。各種GPCRは細胞が外部刺激を評価するプロトコルであると考えられ、この穴を塞ぐ/作用することでGタンパク質のスイッチを押したり、押すのを阻害したりして、人体の生理的な反応を引きだす。

この技術が本物であるかどうか我々投資家から見て評価できるのは以下の4つです
 
1)ヘプタレス社のStaR技術を用いて作られた薬候補物質(HTL9936)のアルツハイマー&統合失調症の臨床治験フェーズ1のデータ。ムスカリン1にのみ作用する物質が期待通りムスカリン1~4に対して1のみに選択的に作用していると観測できた
 
2)メガファーマ(アストラゼネカ/テバ/ファイザーなど)が治験入りをする前の段階で、大きな金額で契約をしている事
 
3)パイプラインの進捗速度が他社バイオと比較しても非常に早いこと

4)「お金になりそうな分野」と「既に作用機序が判明している成功率の高い分野」から手を付けている事。つまり解析技術の高さ故、解析するGPCRを選択できるという状況。

1)については第一相治験を無事に終了したということですから、データ含めて客観的な評価が確定できている部分です。

2)も去年1年のIRや決算により確定している事項で客観的なものといえます。ヘプタレスのPLは非常にたくさんありますが、開示されているもの。導出先が確定しているものだけでも巨大製薬会社が手を差し出しています。またバイオ企業に対する評価がかなり厳しいアメリカにおいても研究段階のものでアメリカ国立衛生研究所(NIDA)から研究資金を供与されていたりしています。(ox1など)

3)も今回のM1作動薬はアルツハイマーと統合失調症の2つのパイプラインとして動き出します。また別のM1作動薬候補物質(HTL18318)の治験も9月に終了予定で短期間にどんどん研究が進捗する。バイオ企業、創薬ベンチャーにおいては常に研究は遅れるものであってこういうのは珍しいです。

4)も大きなポイントで、基盤技術の優位性が、大きな市場のものからチャレンジする事を可能にしているということでしょう。

  • パイプラインの価値を算定する考え方

創薬ベンチャーの価値は保有している研究のラインがどう現金化できるか。それがすべてと考えて良いと思います。

パイプラインの価値=薬のピーク売上×ロイヤリティ率×上市成功率

 まぁこの式は不確定要素だらけでアテにはなりませんが、考え方の基礎としてはシンプルで良い物です。市場規模とシェアを推定するのは難しいですが成功率は統計的なデータもありますので参考にできます。

 創薬は何か影響を与えそうな物質を探すことから始まります。そして基礎研究。リード化合物を選定して動物実験をします。動物実験をすることを前臨床といい、その結果がOKであるなら人体実験=治験の申請をします。許可が下りれば治験となります。

 治験は3段階あり、これもザックリいって、フェーズ1では安全性、フェーズ2では用量、フェーズ3で有効であるか、のデータを取ります。そしてすべてをクリアしてはじめて薬として申請→承認→販売。もちろん販売されてからも一定のデータを取る必要があります。

 前臨床を終えて治験にたどり着いた薬候補がじっさいに発売される確率は統計上10%~20%。そーせいのHP上には前臨床段階の253の化合物が、上市にたどり着いたのは36であると説明されています。これは14%という数字です。もちろんこれは統計の取り方であったり、分野、ファーストインであるか否かによって差異があります。

一例)イーライリリー社の治験の成功率と費用のモデル
フェーズ1 54%  
フェーズ2 34%
フェーズ3 70%
20160220-007

このモデルによれば前臨床段階(preclinical)→上市(launch)は

0.69×0.54×0.34×0.7×0.91=0.08 わずか8%ということになります

治験に入ることができたものは11.6%
フェーズ1を成功したものでも21%
創薬の難しさがよくわかります。


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