前回につづいて、そーせい分析、その2。
今回はヘプタレス社のパイプラインをそれぞれ見ていきます


まずムスカリン受容体関連
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一番上にあるムスカリン受容体M1作動薬。これが2/12日にフェーズ1治験の終了したものです。

表中にあるM1作動薬(HTL9936)はアルツハイマーと統合失調症の治験フェーズ1のデータが取れており、M1以外のムスカリンファミリーのスイッチを押さないというだけでなく、はっきり有意差があるといえる脳の活性化を示すデータが取れており非常にポジティブな内容。また別のM1作動薬である(HTL18318)も秋には治験フェーズ1が終了。ややステルス気味に走っていたラインですが、ciniiなどで論文検索をすれば存在はわかったかもしれません。

これらM1作動薬のフェーズ2は冬あたりにどこかに導出するか共同研究という形になると思われますが、これだけでHTL9936で2つ、HTL18318で2つといくつもの(最低4本)というPLが走るということになりそれぞれが大変価値の高いものといえます。とはいえP2は平均2年、それを4つも抱えると費用としても相当なものになりますので今の企業体力からすれば導出は早いほうが得です。

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↑前回貼ったイーライリリー社の論文にある新薬の成功率と費用の図

P2~承認までの確率は 21.6%。数値上は最難関であるP2を越えられるかが大事なところです。副作用の出にくさは治験での成功率を高めてると言え、田村社長も「データとしてはP2相当のもの」と自信。今後実質的に判定されるするのは用量の問題と薬効の問題の2つです。どちらもクリアできるならば画期的な薬になり得ます
導出するならばロイヤリティは10%、日本での独占販売権。こういった条件でも面白そうです

市場規模はそーせいの会社の説明の予測ではアルツハイマーが70億ドル、統合失調症が60億ドル

アルツハイマーは先駆者のアリセプトがピーク40億ドル。今は特許が切れゾロ品が主流です
ベストインクラスといえる薬がない状態ですのでM1の効能が確かなら主流になれる可能性はあります。
作用機序の違うもの、タウ仮説に基づいたアルツハイマー薬が出現すればおそらく市場規模は上方に変化するでしょう。これにより作用機序も違い実益のあるM1タイプの薬品の存在感はより増すかも知れません
過去にほぼ同じ作用機序をもつキサノメリンという薬候補が副作用で治験を中止していますが、この例から踏襲するにM2,M3に作用せず、それ由来の副作用がでないヘプタレスのM1の成功率は想定よりも高いといえるでしょう。

統合失調症はトップの大塚製薬のエビリファイがピークで年間60億ドル。エビリファイは抗鬱薬や双極性障害の薬としても適応があり、この領域の売上モンスター薬です。統合失調症の市場規模は60億ドルぐらい。統合失調症においてもエビリファイはベストインクラス。これからゾロ品も出てきます。治験の成功率は標準並と予想。上市できたとしてもエビリファイはよく効く薬ですから牙城を崩せるほどの薬効があるかが焦点です


M4、M1&M4デュアル
これに関しては素人が算定しようもないのですが、ムスカリン受容体関連は副作用の出るM2M3に反応しないモノを作りたいということでしょう。
はっきりしているのはこのムスカリンファミリーの1と4のGPCRの解析が十分にできているため現時点ではそれに適合するリード化合物を作る自信があるということ。統合失調症の陽性症状に効く薬はあっても陰性症状を改善させる良い薬はないこと。アルツハイマーも同様。あとは新型の抗鬱剤そのあたりがターゲットと思われます。選択的にスイッチを押せることでいろいろな事ができるんじゃないでしょうか(無責任)
まぁ作動薬拮抗薬等いろいろなパターンで勝負できるのがヘプタレスのすごいところです。精神疾患全般に適応が広がるのであれば市場規模も巨大になります。


次に最も期待されてるA2A
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このHTL1071は主にがん免疫療法の候補物質として、アストラゼネカがライセンスを買いました。もともとこのA2A受容体拮抗薬HTL1071はADHD=発達障害の適応予定で、治験に入る申請を終了していました。つまりこのライセンスアウトも癌免疫とADHDと2つ以上のPLが走ることになります。

がん免疫療法は癌の種類ごとにPLが走ります。癌全体に適応が広がれば市場規模は桁違いになります。先駆者である抗PD-L1抗体、ブリストル・マイヤーズ&小野薬品のオプジーボ、メルク&ファイザーのキートルーダといった薬は既に市場に出ており、現時点では最もホットな分野です。オプジーボは画期的な薬ですがまだまだ改良が必要な部分が多い。
 A2Aの役割はがん細胞の偽装を解く事のようですからオプジーボなどとルートが違い。併用が期待できると思います。メガファーマのほとんどが研究する分野でライバルは多いです。先駆者2社だけでも売上は急増。治験も早期にFDAの承認勧告が出るなど市場規模は急拡大しており、将来の市場規模の見通しについてもどんどん上方修正されています。今の予測では2025年には500億ドル規模とのこと。3ヶ月前には350億ドル予想だったのでこれも時間とともにさらに上方修正されるでしょう。A2Aのがん免疫療法の未来については臨床のフェーズが進まないことには評価できませんが、導出した以上既にリスクはゼロですからマイナス評価になることはないです。成功した場合のリターンはとても大きい

ADHD薬は問題薬の多い分野で、古くはリタリンなど麻薬と同じような作用の薬もありなかなか難しい分野です。こちらも現状決定的な薬はありません。市場規模はそーせいの説明によると50億ドル。個人的にはこの分野で売れてもブロックバスター(10億ドル)は難しいと思います。現役薬のストラテラが売上7億ドル前後



前臨床段階でテバ社に導出したCGRP受容体拮抗薬
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早い段階でテバ社が買っていったCGRP受容体拮抗薬。どの程度ヘプタレス社がCGRPを解析ができているか情報がでていないのですがCGRPもファミリーを形成していると思われていて痛みに関与するレセプターです。テバ社はこの分野の第一人者です。従来薬であるトリプタン製剤は心疾患であるとか脳梗塞であるとか循環系の疾患には使えない。テバ社はTEV48125というこの分野の薬の候補を持っており、CGRP受容体拮抗薬はTEV48125を補完すると考えているようです。TEV48125は最近偏頭痛適応でフェーズ3に入ったところです。
偏頭痛等、痛みに関する薬の市場規模は30-40億ドルとみられています。今期はこの薬が治験に進む可能性は十分あります


依存症オレキシン受容体拮抗薬

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ヘプタレス社の説明によるとファミリーであるOX1、OX2ともに解析が終わっているということです。
アメリカは麻薬汚染が深刻な社会問題となっておりアメリカ国立衛生研究所(NIDA)はヘプタレスのこの研究に3年合計550万ドルという研究開発助成金を授与しました。薬物やアルコールよる依存症、ギャンブルによる依存症、上図に載っていない部分でも睡眠障害であるとか摂食障害に関する適応も考えられ非常に面白そうな分野です。
ファーストインクラスの薬であり市場はわかりませんがそーせいの説明では20-40億ドルとのこと。

まだまだあるよ
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GLP-1拮抗薬は先天性高インシュリン血症の適応を目指すとのこと
少し前に作動薬もリストにあったのですが消えてます。
糖尿病の薬は売上モンスター薬も多いし生物学的製剤もどんどん出てきますからライバルは多い。手を引いたか研究段階で取りやめたか、非開示になったか、失敗したかはわかりません


提携先との共同研究
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ファイザーが目立ちますが、ファイザーの契約のいいところは研究費が出るというところです。ファイザーから出向してきた研究者の人件費なのかどうか、それより大きな範囲なのかどうか。最大10種のGPCRについてそれぞれ最大1.9億ドル。別個薬になった場合はロイヤリティもつくという内容。研究と人材だけとられてしまうというリスクも無いわけではない。まぁそれをするくらいなら、ファイザーの企業の規模から考えてたかだか1500億で過半数握れるそーせいを買収するほうが早いかな。



 パイプラインを総括すると、やはり市場の大きなものから狙うという方針のようで、これは構造ベースドラッグデザインによる創薬が他の創薬研究とくらべて大きく優れている点だといえます。過去の研究に縛られることなく、研究対象に困ることがない。マネタイズの期待値が高いものから手を付けているというのは基盤技術の優位性を補完的に立証していると考えられるわけです。



2回ではまとめきれなかったのでその3へ。
その3ではそーせい株の持つリクスと期待できること、時価総額をどうみるかなど総論の予定

その1を読みたい人はこちら




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