今回はそーせい分析その3。ラストです。将来性とリスクについて書きます

その1 (概論、治験の成功率)
その2 (個別のパイプライン分析

GPCR


  • ヘプタレス社の価値が飛躍する可能性を考える

ヘプタレス社は2007年に設立された創薬ベンチャーです。10年に見たないバイオベンチャーであるということは研究者が旬であると評価でき、非常に高い研究力を持つと行っていいでしょう。GPCR研究に関する論文量では世界をリードしており、このヘプタレスの持つ構造ベースドラッグデザインが本物であるならばこれは世界を変えるほどの力があるかもしれません。

 StaR技術は変形するGPCRを弱いX線(シンクロトロン)をつかいGPCRとリガンドが結合状態、不活性状態、いろいろな形で立体的に構造を解析する技術です。それぞれの状況に応じた極めて精度の高いリガンドになる物質を特定できるわけです。これができた企業はいまのところ存在しません
GPCRの素人解説
 


まず買収の可能性について考えてみたいと思います


GPCRの構造解析にて薬候補を作っていた会社にはレセプトス社というのがあります。
多発性硬化症のP3治験薬のパイプラインをもっており、ギリアド・サイエンシズ、アストラゼネカ、セルジーンといったバイオベンチャーの雄、他にもテバ社がそれぞれ買収提案をして、結局セルジーンに72億ドルで買収されました。ギリアドは100億ドル超提示したのですが蹴られたようです。創薬の敵対的買収は難しい。特許は手にはいりますが研究者は流出する可能性があるためです。レセプトス社にとっては お金ではなく研究開発では骨髄腫、癌領域で実績のあるセルジーンがベストマッチだったのでしょう。


そーせいはどうでしょうか。現在ファイザーがそーせいに対して不利条件での増資を受けたのも将来の布石と見れるかもしれません。当時の平均価格の25%上での増資を引き受けるというのはあまり見たことがない。それと同時にヘプタレス社へ人材を派遣し共同研究をしているようです。人的な渡りをつけておこうということでしょう。これがうまくいくかはわかりませんが搦手とみることもできます。
 
そーせいがヘプタレス社を買収できた経緯を考えると、大手メガファーマからの買収提案を蹴ってそーせい傘下になったという経緯があり (当時は真偽は不明、というか疑っていましたが、いまとなれば事実であろうと予想できます) すぐにメガファーマの傘下に入るつもりはないでしょう。

買収提案をしていた会社はどこか?アストラゼネカ、テバはレセプトスの買収にも関わっています。この2社はヘプタレスの前臨床の薬候補を早い段階でリサーチしお買い上げしていますから、この2つから買収提案があった可能性はあります。


何度も言うけれども製薬創薬業界は世界規模でM&Aは盛んです。ヘプタレスのパイプラインやベースドラッグデザインの特許が高い評価を受けるのであればレセプトスのように薬が上市するまえに巨大な金額で買収される可能性があります。そーせいは今の時価総額は2500億弱。そしてメガファーマ提案の買収は1兆円規模のものはゴロゴロ存在します。

上場会社のひとつのアガリといってもいい。

日本の製薬会社の雄であるタケダ薬品も現在保有するブロックバスターと言える薬は2つか3つ。
巨大市場を持つ薬がいくつもあるならタケダの時価総額。それくらいの金額で買収されても何ら不思議ではないのです。



次に予期せぬ適応というものを考えてみます。創薬の歴史をみてみるとある疾患に適応するだろうと思われ生成した候補物質が予期せぬ疾患に効能があるということは非常に多いです。

ヘプタレス社のアデノシンA2A拮抗薬は当初は発達障害、ADHDの適応を予定されておりその分野での臨床試験治験の許可を受けていました。他方アストラゼネカ社はA2A拮抗物質はがん免疫療法に必要な物質として認知しておりました。結果、アデノシンA2A拮抗薬はアストラゼネカ社にライセンスアウトされましたがマイルストンの大半は癌免疫療法の進捗に対して支払われるものであろうと予想されます。


人類の歴史上の薬というのは思わぬところで思わぬ効果があったから薬として成立してきたのです。StaRはピンポイントでGPCRに直接作用できるということですから可能性は無限にあります。GPCRに対して選択的に作用/拮抗する物質は非常に応用性が高いと思われ、思わぬ適応での導出はどんどん出てくるのではないかと推察します。

ヘプタレス社は英王立研究所と共同研究に出資することになりました。ORBITというプロジェクトです。オーファンGPCRをターゲットにする。医学者科学者として未開の大地に挑む探検者の気持ちでしょう。GPCRの中にはこのスイッチを押したら何が起こるかわかってないものも相当な数があります。思いもよらぬことが発見され世界の医学に革命をもたらしてくれる日が来るかもしれませんね。これはすぐにお金になる分野ではないでしょうがワクワクする領域でもあります。


最後にパイプラインの進捗でどのくらい価値が上がるのか。今ヘプタレス社のもつM1、アルツハイマー適応の薬ですがアルツハイマーの薬は市場にはほぼ1種類しかありません。アリセプト型といえアセチルコリン受容体に作用する薬です。アリセプトはアルツハイマーの最初の薬ですが、効果としてはこれを明確に超えている薬は出てきていません。点滴ではなく貼薬である小野薬品のリバスタッチなど亜種の薬もでてきていますがどの薬も副作用の問題は克服できていません。また根治療のくすりではありません。

バイオジェン&エーザイの薬候補であるBIIB037という治験中の薬があります。作用機序(タウ仮説に基づく)が違う根治療薬となりうる薬です。去年治験フェーズ1を良好な結果で通過した時に両者の時価総額は合計で約1兆円も押し上がりました。アルツハイマーの薬はそれほど渇望されているということです。この薬はフェーズ2にて用量の問題(用量をふやせば効果が上がるはずだという目論見)で期待の効果を出せず失望されました。少ない用量に対して中程度の用量のものが有意差を出せなかったということです。現在治験は進んでいますが株価はだいぶ下がりました。

アルツハイマーに対する決定版の薬は世界には存在しない。そして銅鉄研究であろうとも、ベストなものを世界は欲しがっているということです。

  • リスクの問題

ヘプタレスはまだ市場で売る薬をつくったことがありません。これは大きなリスクといえます。
またそーせい、ヘプタレスは創薬ベンチャーであり、将来10倍以上の規模を持つ成功したベンチャーになるためには乗り越えなければいけない壁がいくつかあります。

創薬から製薬へ。たとえば製薬もする企業に脱皮するのであれば工場も必要です。また人材組閣のスペシャリストも必要です。企業の形態が変わる時というのは大きな変化がありますから必要とされる能力や人材も変わります。この部分は非常に大きなリスクといえます

また創薬として自社でパイプラインをすすめるのであれば相当なキャッシュが必要です。

レセプトス社は赤字をだしながら増資を積み重ね、さいごは巨額の買収でセルジーン傘下となりました。
これはずっと赤字の企業であっても巨大市場を持つ薬がP3までいけば大きな金額で買収される可能性があるという一つの例ですがP2P3とフェーズが進むにつれかかる費用も増大します。
上場会社としては、ある程度力をためて期間損益上は赤字のPLも出しながら、最終的に大きな成果を得たほうが得になる。幾つかは自社ラインで最後の方まで持っていく可能性があります。

ヘプタレスの開発力は凄まじく日進月歩であらたなPLが追加されていきます。
これは費用という意味ではどんどん増加していくということですからこれも注意が必要です

これらは買収以外でそーせいが一兆円企業に脱皮するには将来巨額な資金が必要なことを表しており
現在のそーせいのキャッシュでは失敗した時のリクステイクが十分ではありません
会社方針によっては増資は覚悟する必要があると投資家としては肝に銘じておかねばなりません。 

もう一つは特許周りに関するリスクです。製薬会社は周辺特許を押さえますが、それでもライバルに情報をとられたりします。小野&ブリストル・マイヤーズの抗PD-l1はオプジーボという薬品名で売りだされていますが、アメリカではメルク&ファイザーのキートルーダという似たような薬のほうが承認が早かった。特許や承認申請はBSKのほうが早かったのにもかかわらず。です。現在ブリストルとメルクファイザーは裁判中ですが、巨大な市場を持つ薬は別の思惑が動いており、もしかしたら汚い部分もあるということを覚悟しなければなりません。

我々投資家はこういったリスクも十分に考えて動けるようにしなければいけないし、僕もそうでありたいと考えてます






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